「36」の続きです。53回東京小児科医開学術講演会できいた4番目の講演です。1999年6月13日の日曜日。演題は『小児結核の最近の話題』。講演者は国立小児病院呼吸器科川崎一輝博士です。
小児結核の診断や予防には、今日でも様々な問題点があります。川崎先生はご自分の経験から以下の問題点についてお話をされました。新進気鋭の若手医師です。少し強引かなーと思われる場面もあり、時間があっという間に過ぎてしまいました。
@:赤ちゃんのツベルクリン反応(一番始めのツベルクリン反応の検査)が陽性になった場合:1ヶ月後に再度ツベルクリン検査を行います。その時に注意する点は、ツベルクリン反応を行う場所を変えることです。この場合はほとんどが赤ちゃんの皮膚が弱いために『陽性』なった。
A:学校検診ツベルクリン反応検査が強陽性になった場合:家族の中に結核を思わせるような人がいるかどうかを、慎重に、丁寧に聞き出し、田舎のおじいちゃん、お婆ちゃんのことまで聞くように努力すること。それでも、結核患者さんと会ったことがないような場合は、3ヶ月後に再度ツベルクリン検査を行います。そして、やはり30ミリメートル以上の強陽性や水疱が作られた場合には抗結核薬の予防内服をします。
B赤ちゃんの時にBCGを接種したのですが、学校の検診で陰性になった場合:今までは直ちに『BCG』の接種をしてきましたが、最近の国立小児病院では、赤ちゃんの時のBCGの接種の針の跡が9/18(BCGの接種の針の数は18っ個。半分以上免疫が付いていると見なすと9個以上の針の跡になります)以上あれば『BCG』接種はしない方針だそうです。体の免疫機構が覚えているからだそうです。この場合再検査すると、ほとんどの子供達が陽性になります。この際検査しても陰性の場合か又は、赤ちゃんの時に接種した『BCG』の跡が9/18以下の場合には『BCG』を打ちます。
C:家族に結核の患者さんが出た場合:胸部レントゲン写真、喀痰検査、ツ反、血沈検査を1から2ヶ月に一回づつ慎重に行い、かつ、以下に説明してあるような予防的な抗結核薬内服を行います。
D初めて結核にかかった場合の薬の使い方。
EBCG接種後のリンパ節の炎症について:大体1万人にBCGを接種すると1名や2名位の赤ちゃんの腋のリンパ腺が腫れるとのことです。でも、放って置いても2ヶ月くらいで腫れは引くそうです。私は1年間も腫大している赤ちゃんを診たことがあります。切開したらいいのになあと思いました。
F色々な結核のレントゲン写真を見せていただきました。右の上肺に多くみられる初期の肺門リンパ腺の腫れ。左のわかりにくい肺門リンパ腺の腫れ。脊椎カリエスになった子供のレントゲン写真。胸水と言って、肺に水が貯まった結核、などいろいろな場合があって、なかなかレントゲン写真一枚では解りかねる場合が多いとのことで、CTスキャン、喀痰培養、ツベルクリン反応、血液検査、など多くの検査で決定して行くそうです。
G予防的内服の方法:INAH(アイナ:イソニアチド:結核菌に作用する様に作られたお薬)ですが、このお薬を子供達に飲ませる量について:先生は、体重1キログラムあたり7ミリグラムから10ミリグラムを予防的投与量としている。投与期間は6ヶ月としているとのことでした。これに関しては私も異論はありませんでした。
H最近の感染症学会からの質問:排菌者と接触した5例の児童にCTスキャンをするため他の大きな病院に送院したら、患児の親たちから『治療を始めたのに無責任だと言われた』という内輪の愚痴があったが、私は設備などで更に良い治療が可能になったら、どんどん上部の医療機関に送院する事が常識だと思い、質問者に同情しました。田舎ではこの様な感情的なもつれがあるんだなあと思いました。
I最近の新聞報道から。『何で小学校でのBCG接種が中止になったのですか?』:この答えははっきりとは言われませんでしたが、昨今の予算削減方針の関係だそうです。こんなところにも国家の予算問題が出てきているのだと痛感しました。ちなみに現在米国では、このBCGを国家の予算で行おうという取り組みが始まりました。時代に逆行しているように感じられました。NATO軍の爆弾代の数兆円を支払う日本国家が子供達の予防接種の予算がないなんて夢もチボウもない日本になっちゃった。チョウナンセンス!
J今でも結核患者さんはいるのですか?:1998年の統計ですが。新規に起きた結核の患者さんの日本での数は前年度より0.2%増加の4万2,715人でした。
K田舎で増えているのですか?:違います。大都市で増えています。大阪が一番。東京。大都市近郊の県。
L結核で死んでいる人は年間に何人ぐらいいるのですか?:1998年度は前年度よりも116人減って2千742人でした。
以下は私が調べた情報。
M小学校1年生のツベルクリン反応で陰性になって、腕をよく調べると、BCGの跡が9/18以上ある児童に2ヶ月後に再検査をすると、陽性になっている子供がいます。この現象をどう考えるのですか?
田村先生の回答
T:平成11年度の三重県の結核指定医療機関の資料によると、『ツベルクリン検査の二段階試験法(ツベルクリン反応を2ヶ月間の間をあけて2回行う方法)』で85名を観察した。全員小学校1年生。かつ赤ちゃんの時にBCGをきちんと受けている85名を観察した。第一回目のツベルクリン反応の直径が0〜4ミリメートルの小学生40名のうち二回目で24人が陽性になった。5〜9の小学生は45人のうち39人が陽性になった。各々の陽転率は60%と86.7%でした。
U:すでに他の施設で実験が行われていて、小学校1年生のツベルクリン反応陰性者の【コッホ現象】==コツホゲンシヨウ Koch* 『ロバートコッホが発見した現象のこと』(コッホ:1843‐1910,細菌・衛生,独).結核菌が人体あるいは動物体内に侵入して2週前後経過すると,組織の結核菌に対する反応性が著しく変化する.2度目の同菌侵入では最初の場合に比べて極めて激しい局所の炎症症状が現れる.この強められた組織反応をコッホ現象とよぶ.強く感作され,2度目に侵入した結核菌が多いと,局所の細胞は破壊され,組織の脱落を起こす.これが肺組織で起こると,空洞形成につながる』==も既に検討されています。すなわち、BCG接種暦のある小学生は70%、中学生は80%ですので、たとえツ反が陰性でも、体の免疫機構が『BCG菌』に対して免疫を獲得しているので、BCGの接種は必要がないだろうと学者は考えています。
以上を総合して平成11年度の答申は1:小学校の場合;ツ反が陰性のもの。
ア:BCGの跡が10/19個以上ある児童はBCG接種を見合わせ、一ヶ月後に再度異なる部位でツベルクリン反応を行っても陰性の場合のみ、BCGの接種を行う。ツベルクリン反応が陽性の児童は、
:感染無しとしてよいものは長径が30ミリメートル未満で強陽性以外のもの。
:精密検査の対象にするものは、(a)長径が30ミリメートル以上のもの(b)30以下でも水疱壊死が認められるもの(C)30以下でも20ミリメートル以上の硬結が認められるもの。
:化学的予防療法の対象になるもの(a)過去数年以内に結核の患者さんと接触があることが判明したもの(b)エックス線学的所見上、結核治癒所見または安定型病巣の発見されたもの(c)明らかな水疱、壊死などのきわめて強い反応が、初めて観察されたもの(D)BCGの接種の跡が判らなくて、20ミリメートル以上の硬結の在るものをBCGの接種対象にします。
でも、私には、以下のことがわかりません。
追加免疫(結核菌に対しては、再度BCGを接種すること)で、さらに強力な抵抗力がつくので、BCG接種は積極的に行うほうがよいと思うのですが…?。
最後に『結核』の初期は一般の『風邪』見たいな症状です。したがって『長引いた咳』、ながびている『微熱』などの症状のある人は、積極的に医療機関に行き、いろいろな検査を申し入れるべきであると思います。昔も今も結核は怖い病気です。しかし、早期に発見して早期に治療を開始すると、簡単に治すことが可能な病気なのです。『他人に伝染させること』はいけない事だし、自分自身も損だから。風邪の症状が1週間以上、続いたら、早めに医療機関へ行って、胸の写真をお撮りください。医療レントゲンはたとえ毎日写しても心配ないぐらい弱い放射線で写せる時代になっています。