我々人間が最も恐れている病気に、『ガン』があります。『ガン』が何故発生するのかについて、現在までに判明している事について述べてみます。ウイルス学的なアプローチです。一般の細胞が、『ガン化』するまでには幾つかの段階を経て起こることが解り、更に複数のガン遺伝子機能の関与と、ガン遺伝子抑制機能の不活化が重要な要因であることが判明しました。
そもそもガンの遺伝子には、
@もともと正常細胞の遺伝子であったものが何らかの原因で変化し、正常細胞をガン化させる活性を獲得した場合
A正常の細胞の遺伝子とは関係がないガン遺伝子
の二つがあることが判明しました。そしてこの現象にはウイルスが関与していることもわかって来ました。
@の正常細胞に感染し遺伝子をガン化させるウイルスにレトロウイルスがある。
Aのガン遺伝子を持って細胞に感染して行くウイルスには、アデノウイルス、SV40ウイルスなどのDNA型実験ガンウイルス、ポリオーマウイルスがある。
私達の体の細胞は、刻一刻と誕生して、そして死滅しています。例えば皮膚のアカなども同じ事になります。次の世代に取って代わる時、遺伝子の情報伝達がされて行きます。その伝達に際して種々なる誤りが伝えられるためガンが起こるのであり、その正しい伝達を妨害するのがウイルスであるという仮説です。私はこのウイルス説を支持します。
1:レトロウイルス:HIV[人に免疫不全症を起こすウイルス。エイズの原因ウイルス]、HTLV[成人型白血病を起こすウイルス]などに代表されるウイルスです。これらのウイルスは、感染した細胞の遺伝子に入り込み、遺伝子自体を変化変性させて、正常細胞をガン細胞化させる。
2:DNAガンウイルス:アデノウイルス、SV40ウイルス、ポリオーマウイルスなど、自然な感染の状態では、人体には腫瘍を作らない。実験的に、ハムスターなどの齧歯類動物に注射してやると、簡単に腫瘍を作り、大きくなる。ヒトアデノウイルスの遺伝子地図はもう作られて、どの部分がガンを発生させるかについてもわかって来ました。
3:ガン抑制遺伝子:子供の目から発生する悪性腫瘍に、網膜芽細胞腫[Retinoblastoma;レチノブラストーマ]があります。この研究はかなり進んでいます。1986年、この研究から、ガンの発生を抑える機能を持つ遺伝子[ガン抑制遺伝子]として、RBという遺伝子が発見されました。ヒト第13番目の染色体の長腕g14・2の位置にある遺伝子であることも確認されました。アデノウイルス、SV40、パピローマウイルスなどは、このRB遺伝子の働きを妨害してガンを発生させやすくする。
4:ガン抑制遺伝子p53:大型のT細胞中に多く発見される、ガンになるのを妨害する遺伝子です。骨肉腫、乳癌、肺ガン、膀胱ガン、大腸ガン、卵巣ガン、食道ガン、口腔ガンなど多くのガンに、このp53遺伝子の構造異常が発見されています。このp53遺伝子は、人染色体17番の短腕p13・1に位置する遺伝子です。パピローマウイルスによって、その抑制機能は妨害される。
このようにして人間の体には、ガンを作り出す遺伝子とガンの発生を抑える遺伝子とがお互いに拮抗して人体の恒常性を維持しているのだと思います。ウイルスが其の邪魔をした結果、ガンが発生するのであると考えています。
もう少し簡単に説明してみましょう。
1:まず人体を構成する各細胞は、ある一定の日数で新しい細胞と置き換わっていく。
2:例えば人間の赤血球に関して言えば、23日でその赤血球は寿命を迎える。そして新しい若い赤血球[網状赤血球と言います]が絶えず補充されている。
3:新しい赤血球は骨髄と言う場所で、『幹細胞stemmcell』から作られている。
4:この幹細胞から作られる兄弟細胞には、白血球、血小板、リンパ球などがある。どうして同じ幹細胞からいろいろな細胞に適切に分化されているかは、遺伝子の規律正しい統制制御のもとで、ある遺伝子の命令が下った細胞は赤血球に、また、ある遺伝子情報が伝わった場合は白血球に、血小板にと、いろいろと分化が行われています。
5:細胞達が分化成長する場合には、必ず遺伝子の情報伝達がなされます。
例えば、『EATTHEHAMANDEGGNOW』[即ち『EAT THE HAM AND EGG NOW』:さあハムエッグを食べましょう。] という遺伝子の情報が、お母さん細胞から子供の細胞に伝達されると仮定すると、此の情報の伝達が、仮に『A』という誤った情報がウイルス感染時に、先にくっついてしまったと仮定すると、もう大変です。
『AEATTHEHAMANDEGGNOW』[AEA TTH EHA MAN DEG GNO W』と、全然わからない文章になります]。これがガンの発生の引き金になると思ってください。
別の例えでは、『輪になって雁が飛んでいる。[ワニナッテガンガトンデイル]』の遺伝子情報の伝達の際に、ウイルスがちょっといたずらをして『イ』という情報を、その遺伝子情報伝達系の中にいれてしまうと、『イワニナッテガンガトンデイル』即ち、『岩になってガンが飛んでいる[これをガンの播種性転移と呼びます]』と、とんでもない情報になり、これがガンの発生を促すわけす。
このようにして考えて行くと、納得のいく現象が過去にも一杯あったことがわかりました。例えば、妊娠初期に『風疹ウイルス』に罹ってしまうと、『先天性風疹症候群』と言って先天性心臓病などの異常が起こりやすいことが、昔から事実として教科書に載っていました。妊娠の初期の胎児細胞は、いろいろな臓器に細分化して行きます。遺伝子のしっかりとした監督管理のもとで整然と種々なる臓器に分化して行くのです。この際、『風疹ウイルス』がちょっといたずらをして、その遺伝子情報伝達の邪魔をして、いたずらで間違った情報をインプットすると、心臓異常や種々なる先天性の奇形が起こってしまいます。このような現象は、すでに実証済みであります。
それでは、このようなウイルスのいたずらを防止するためには、どのようなことをしたらよいのかについて述べてみましょう。
@無菌室に入る。地球上の全てのウイルスを殺菌する。[これは非現実的です]
A抗ウイルス剤を予防的に内服する。[これも現時点では副作用などで無理があります]
Bワクチン[予防注射]の接種を積極的に行う。[このことは大変良いことだと思います。すべてのウイルスに対するワクチンの研究が待たれる。が、まだ先だと思います]
C漢方方剤の予防的な内服。[私は現時点では一番良い方法だと思います]
DビタミンC,日本茶、海草、食事療法、無添加食品の摂取、薬膳料理などいろいろあります。いずれにしろ、罹ってから治すよりも、予防した方が本人や家族にとっても良いことだし、社会経済にとっても良いことであると信じて日常の家庭医診療に当たっています。